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ドクターが女性か男性かで、患者の生き延びる確率が変わる説

The New York Times

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(Agnes Lee/The New York Times)

「ドクターが男性であるか、女性であるかが、患者の生死に関わる可能性がある」

先ごろ、そんな研究結果が学術誌『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に掲載されました。過去20年間にわたりフロリダ州の病院に緊急入院した58万人以上の心臓病患者データを分析したところ、担当医が女性であった患者の死亡率が、男性医師が担当した患者よりも低かったこと、また、男性医師が担当した女性患者の死亡率が最も高かったことがが明らかになりました。

しっかり診てくれるのは男性?女性?

それに先立つ2016年発表のハーバード大の研究でも同様の結論が出ています。

この研究は、高齢者向け公的医療保険メディケアに加入する入院患者150万人分のデータを解析し、担当医が男性医師の場合と女性医師の場合の、患者の30日死亡率(入院日から30日以内に死亡する確率)と30日再入院率(退院後30日以内に再入院になる確率)を比較しました。

その結果、女性医師が担当した患者のほうが、30日死亡率も30日再入院率も低かったことがわかりました。死亡率の差は0.5%未満と一見ごくわずかです。でも、仮にこの比率をメディケア加入者全体に当てはめてみると、全米で約32,000人もの死亡を減らせる計算になります。

話をしっかり聞いてくれるのは、女性医師

また、米ジョンズ・ホプキンス大公衆衛生学の研究者らによる「かかりつけ医のコミュニケーション」をテーマにした研究でも、男女間に統計上有意な差異が確認されました。女性のかかりつけ医師のほうが概して、患者の話を聞く時間を長く持っていました。患者とのコミュニケーションの時間は平均で、女性医師のほうが男性医師よりも診察1回当たり2分間、または1割程度長く、その反面、時間効率の点では、1日当たり1時間以上男性医師に遅れをとっていました。

女性の心臓病を新たな視点でとらえ、全米の注目を浴びた『Women Are Not Small Men(訳:女性は小さな男性ではない)』の著者である心臓内科医ニーカ・ゴールドバーグ女医は、こうした研究の目的は、男性医師を否定することではなく、患者が、自分の言葉に耳を傾けてくれる医者を見つけられるように手助けすることであると語ります。「男性であれ、女性であれ、すべての医師の目標は、患者の命を救うことですから」

女性の心臓病は症状がわかりにくい

ニューヨーク大学女性専門医療センターの医長を務めるゴールドバーグ氏は、心臓系の疾患では、女性の症状は複雑でわかりにくいため、コミュニケーションをうまく取ることが診断する上でとりわけ重要になると語ります。例えば、女性は心筋梗塞を発症している場合でも、胸痛が現れないことも多く、女性患者が胸の痛みを訴えないからと言って、心筋梗塞である可能性を除外する例は珍しくないそうです。

「医師は、女性の患者の診療には時間をかけて話をよく聞き、確実に症状を診断できるようにしなければなりません」

最近初診したある女性患者は、女性の医師を探し求めたと彼女に語りました。男性医師は、症状や治療などの説明や患者の質問に答えるために、時間をかけてくれないだろうから、というのがその理由でした。

「患者が医師に期待しているのは、正確な診断を下すことだけではありません。医師が自分の話を真剣に聞いてくれているという安心感を得たいのです。コミュニケーションも医療の重要な一部です」

自分の症状をきちんと医師に伝えられる?

冒頭のフロリダの研究チームは、研究結果の解釈は慎重に行う必要があり、女性医師が治療した女性患者の生存率がなぜ高かったのかは、「女性医師は女性特有の病気を得意とするから」「女性のほうがコミュニケーション能力が優れているから」「患者の言葉から治療のヒントをいち早くつかめるから」などの理由が考えられますが、いずれも推測の域を出るものではないとしています。

この論文の筆頭著者である、ミネソタ大学カールソン経営大学院のブラッド・グリーンウッド情報科学・意思決定科学准教授は、「女性は男性医師を避けたほうがいいとか、こういうタイプの医師に診てもらうべきとか、言いたい訳ではありません。それは本題ではありません。むしろ、医者が患者の症状を真剣にとらえ、患者は自分の症状を確実に伝えられるようにする必要があると訴えたいのです」

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Image via Shutterstock

長〜い患者の話に耳を傾けてみると……

スタンフォード大学医学部教授のドン・バー氏は、患者とのコミュニケーション方法には医師の性別によって違いがあると語ります。患者の話が脱線した際にさえぎって元の話題に戻そうとする傾向があるのは男性医師。ある研究では、患者の話をさえぎるまでの時間は、女性医師の平均は3分間でしたが、男性医師の平均はわずか47秒でした。

バー氏は以前、患者の話を一切中断しなかったら、患者がどのくらい話し続けるか個人的に試してみたことがあります。相手は70代の女性患者でした。

彼女は、自分は診察を受けるのは億劫だったが、友人や家族を安心させるために病院に来たのだ、と言った後、天候から、咳の症状、薬局でどの薬を買えばいいかわからないこと、妹が心配性であることまでとりとめもなく話し続けました。看護師は、予定時間をとうに過ぎていることを医師に知らせようとサインを送り続けましたが、彼は彼女の話をさえぎりませんでした。結局、患者は22分間話し続けました

診察の結果、彼女は肺がんと診断されました。バー氏は、慰めの言葉をかけました。すると、彼女は微笑み、「良い人生でした。でも先生、これだけは言わせてください。今日の診察は、これまで受けたなかでベストな診察でした。私の話をきちんと聞いてくれたのは先生だけです」と言いました。

「聞いてもらえている」というヒーリング作用

これは彼の心にいつまでも刻まれる出来事となり、この体験をエッセーにまとめ、医学学術誌『Annals of Internal Medicine』誌に発表しました。すべての患者にそれだけの時間をかけるのは現実的には無理な話ですが、バー氏はこれをきっかけに「話を聞く」ことの重要性を考えようになりました。

「それ以降、治療した一人ひとりの患者について、話を聞く機会を持つよう気をつけるようになりました。医師の私が話をリードする必要がある場合は、なるべくやさしく話すことを心がけています。医者が自分の話を聞いてくれる、自分を気遣ってくれる、自分が経験している苦しみをわかってくれる、と思えたら、病気との戦い、痛みとの戦いはずっと楽になるはずです」

「家で安静にしてください」は信用できる?

ニューヨーク州のリタイアした元不動産会社経営者のエドナ・ハーバーは、素晴らしい男性医師にも女性医師にも治療を受けた経験がありますが、最悪の体験はすべて男性医師の時でした。ある男性医師は、彼女が提出した病歴をほぼ無視したため、自分の訴えが正しいことを証明するために診療記録のコピーを渡して、その病院には二度と行きませんでした。別の男性医師は、彼女が検査を受けられないと言うと、激怒。単にスケジュールが合わなかっただけなのに「怒鳴りだしたのよ」とエドナ。

最近、心臓の動悸とめまいがあり、ゴールドバーグ氏の診察を受けることにしました。しかし、病院で受けたいくつかの検査の結果、心臓に異常は確認されませんでした。

「もしこれが男性のドクターだったら、たぶん肩に手を回して、『いいですか、家に帰って、リラックスし、瞑想し、安静にしてくださいね』などと言い、それで、おしまいだったでしょうね」

話を聞いてくれる医師は心強い

しかし、ゴールドバーグ氏には、エドナは医師の診察を受けようと思ったほど、不調に悩んでいたのだと考え、数日間、携帯型心電計を装着するよう勧めました。数日後、エドナの心電図データに異常が検出され、心臓ペースメーカーが必要なほどの病状であることがようやくわかりました。

「彼女は私の話に耳を傾け、私の言葉を信頼してくれました。どの部門の医師であっても、自分の話を聞いてくれる医師に出会うことがいかに大切であるか、すべての女性に知って欲しいと思います。病院でひどい扱いを受けている女性が今、大勢いるはずです」

© 2018 The New York Times News Service[原文:Should You Choose a Female Doctor?/執筆:Tara Parker-Pope](翻訳:Ikuko.T)

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