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逆境をバネにした人、あきらめた人。危機管理術が人生を変えるよ

The New York Times

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Image via Shutterstock

2018年秋の投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻に始まった、世界的規模の金融危機。その間、ニューヨークタイムズは数百に上る人々にインタビュー。あれから10年。この数週間、私たちは彼らの行方を再び追ってみました。

ここに登場する5人はバックグラウンドも違えば、働く業界、居住地域も異なります。共通しているのは、それぞれに特定できるある瞬間があったということ。そのとき彼らは、正しいにせよ間違っているにせよ何らかの決断を下し、運命に翻弄されました。そういった瞬間の積み重ねで、今の彼らがあります。

この10年間、それぞれ、どんな道をたどり、どんな選択をしてきたのでしょうか。

回り道しなければ、今の自分はなかった

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「カレッジの4年間だけでは、就職戦線に出るには準備不足だった」ジェイソン・マーティン。2018年8 月27日マサチューセッツ州ボストンで撮影。(Ross Mantle for The New York Times)

ジェイソン・マーティン(31歳)

2008年秋、マーティンは、サウス・カロライナ大学4年生で、スポーツ&エンタテインメント・マネジメントを専攻していた。翌年、卒業した直後の20歳代前半の失業率は15.2%に上った。

2009年、本紙のインタビューに、「当初は、就職するつもりだった」と答えた。「でも、景気のせいで、卒業したけど、企業に面接してもらうことすらできない人が大勢いるんだ。仕方がないので、大学院に行くことも検討している」

マーティンは、バージニア・コモンウェルス大学のスポーツ・リーダーシップの修士課程に入学した。学費の大半を両親が肩代わりしてくれ、残りを奨学金でカバーした。しかし、振り返ってみると、その進学が、フロリダ州オーランドにあるディズニーワールド内のESPN ワイド・ワールド・オブ・スポーツ・コンプレックスでの1年間のキャリア開発プログラムに入る重要なきっかけになったと彼は言う。

現在、マーティンは、ボストンの市場調査・コンサルティング会社「Cスペース」のシニアコンサルタントを務めている。会社のキャリア支援制度を活用し、働きながらMBA取得を目指し、ビジネススクールにも通学している。

2009年に1年間の回り道を決断したことは、後悔していない。「社会に出るための訓練のようなものが必要だった。カレッジの4年間だけでは、就職戦線に出るには準備不足だった」

「大学院に行っていなかったら、どうなっていたんだろう。それでも成功していたと思うけど、今ほど責任感のある仕事に就いていなかっただろうね」

正規雇用はもうあきらめた

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「きっともう、正規雇用で働くことはないわね」 メグ・フィッシャー。2018年8 月23日ジョージア州マリエッタで撮影。(Ross Mantle for The New York Times)

メグ・フィッシャー(56歳)

2009年初めに失業した時、フィッシャーは、それが人生のターニング・ポイントになることに気付いていなかった。少なくとも最初は。

弁護士秘書のフィッシャーは、それまでにも職を失うことがあったが、必ず次の職をすぐ見つけられた。自分の学歴、20年にわたる職歴、業界内に培ってきた強力な人脈があれば、今度も次の仕事は見つかるだろうと楽観的だった。

ところが、1年以上、仕事は見つからず、見つかっても長期雇用にはならなかった。それ以来、彼女は安定したフルタイムの仕事に就いていない。今では探すことすら諦めてしまった。

「きっともう、正規雇用で働くことはないわね」

彼女の失業で、ピーク時は8万ドル(約900万円)あった世帯所得が半分以下に減った。夫妻は2009年末に自己破産を余儀なくされた。その3年後、アトランタ郊外の自宅を差し押さえで失った。

一番困窮した時には、貧窮者向けの「フードパントリー」から食料品の支援を受けたこともあった。彼女の最大の後悔は、当時小学生だった2人の娘に貧困が与えた影響である。「娘たちは、出かけたいときに出かけ、欲しいものを買っていた頃を覚えていないの」

最近ようやく、ある程度安定して暮らして行けるようになった。彼女はユダヤ教の礼拝用ショールを注文製作するビジネスを始め、副業として、ネットワーキンググループで知り合った住宅ローンブローカーの事務を手伝っている。友人の助けもあり、新居も買うことができた。先日、少額だが、叔母の遺産が入ったので、未払いの医療費を返済できた。

しかし、あの不況で受けた傷は完全には癒えていない。彼女の収入はかつての給与の数分の1、夫妻の老後資金はほぼゼロ。ジョージア州マリエッタに住んでいるが、息子が高校を卒業したら、節約のために山岳地域のログハウスに引っ越すことを検討している。

政府による失業率調査では、彼女のように非正規のパート職であっても、有償の仕事に就いている場合は「雇用状態」とみなされる。

「過去最低の失業率が報道されていますが、私のような人は失業者には含まれていません。私たちが、以前の暮らしに戻ることはもうありません」

9年でホームレスから住まいを売る人に

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「夜中に、ケチャップやマスタードで飢えをしのいだことすらあったよ」ダンテ・ホイットフィールド。2018年8 月25日ワシントン州タコマで撮影。(Ross Mantle for The New York Times)

ダンテ・ホイットフィールド(44歳)

2009年に本紙がホイットフィールドにインタビューした時、彼は失業し、ホームレスになりかけていた。友人宅のソファで眠り、マクドナルドのバリューメニューで何とか生き抜いていた。

「夜中にケチャップやマスタードで飢えをしのいだことすらあったよ」と当時を振り返る。現在、ホイットフィールドは、ワシントン州タコマで不動産業を営む。クライアントを開拓し、貯金をし、十数年振りに将来の計画を立てている。

「多分、ここ20年で今が一番経済的には安定している」

思えば長い道のりだった。1999年、カリフォルニア州に引っ越した時、ドットコム・バブルが弾ける直前だった。独身で20代半ば。すぐにシリコンバレーの通信会社で働き始めた。エグゼクティブ・アシスタント職で、年棒は6万ドル(約670万円)。

ドットコム・バブルは崩壊したが、彼にとっては「ちょっとした後退」に過ぎなかった。すぐに次の仕事をサンディエゴで見つけ、景気回復した時に再び転職し、サンフランシスコに戻って来られた。

「当たり前だと思ってたよ。また、高給をもらって、その調子で行けるって」

見込みは外れた。2007年にまた解雇。その後2年間、ほぼ失業状態。働いても、なんとか食いつなげる程度の仕事だった。一時、3つの仕事を掛け持ちしたことがあったが、合計しても週に500ドル(約56,000円)しか稼げなかった。鬱になった

その後、ひょんなことからワシントン州タコマに行くことになる。そこで、ガールフレンドに、不動産業の夢を追いかけてみたらと言われた。2018年1月に不動産ブローカーの資格を取り、既に複数のクライアントを確保した。3月以降で7件目の物件を間もなく成約する。売却代金は合計で、160万ドル(約1.8億円)に達する見込みだ。

「飢えで苦しんだり、ホームレスの生活を実体験した不動産業者なんて、他にはいません。それが今や僕の強みになっています」

もう一度自力で立てるようになった今、予算を厳密に管理し、不動産マーケットが軟化した場合に備えて、バックアッププランも考えている。

過去の教訓に学んだんだ。うまくいかない時期は誰にでもやってきますから」

本来ならもう早期リタイヤのはずだった

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「アメリカン・ドリームは私には叶わない夢だった」テリー・サドラー。2018年8 月31日ケンタッキー州リッチモンドで撮影。(Ross Mantle for The New York Times)

テリー・サドラー(60歳)

1990年代、サドラーは、 インディアナ州にある3M社の工場で働いていた。手当付の待遇の良い仕事だった。企業年金が完備され、55歳でリタイアすることも可能だった。でも30代だった彼女は、よく考えずに仕事を辞めた。きっともっとましな仕事が見つかるはずだと思って。

「キレちゃって、そのまま職場に戻らなかったの。思えば、それが、下降の始まりだったの。それ以来、その時のような安定感を味わうことは一度もなかったわ」

それでも、工場関係の仕事を見つけ、どうにか切り抜けてきた。2000年代半ばに就職した自動車業界の仕事は、時給18ドル(約2,000円)の高待遇の条件だった。

しかし、その安定は長くは続かない。2008年に雇い止めとなり、次の仕事は見つからなかった。2010年に本紙が、インタビューした時、失業保険が打切られたところで、車のローン返済資金を求めて、教会のメンバーに支援を頼っていた。

ケンタッキー州リッチモンドに住む彼女は、この8年ほど働いたり、失業したりを繰り返してきた。いずれも給料は良くないし、長期の雇用にはならなかった。現職は、自動車ディーラーの受付。かつての工場勤務の時代の給料よりはずっと低い賃金で、しかも毎日、80キロもの距離を通勤しなければならない。その上、9月の試用期間の終了時に解雇されるかもしれない。そうなったら、60歳でまた職探しをしなければならない。

なんとかなる、と考えるようにしているが、それもだんだん難しくなっている。退職後に全米旅行することを夢見ていたが、今、自分はリタイヤできるのか疑問を持っている

「人並みに休暇を取りたいし、車のローンを終えたいし、孫たちにも何かしてあげたい。でもできないの。アメリカン・ドリームは私には叶わない夢だった

差し押さえから10年、マイホームを入手

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「新築じゃないけど、すごく快適なんだ」ギレルモ・ゴンザレス。2018年8 月22日フロリダ州スプリングヒルで撮影。(Ross Mantle for The New York Times)

ギレルモ・ゴンザレス(54歳)

2017年6月、ゴンザレス夫妻は、フロリダ州のタンパ北部スプリングヒルに2LKの住居を13万ドル(約1,500万円)で購入した。孫たちが遊べるプールや裏庭もあり、何よりも良かったのは、予算以内だったこと。

「新築じゃないけど、すごく快適なんだ」

彼らのストーリーは、大不況の打撃を受けた人の典型的な例である。2004年に、マイアミ郊外に住宅を少額の頭金で購入し、借り換えを利用してローンを返済していた。決して贅沢ではないが、酒類販売業のセールスマンの稼ぎを上回るライフスタイルを送り、それを借金で維持していた。

ところがフロリダの住宅市場が暴落し、彼らは借り換え不能に陥った。同時に、景気が冷え込み、酒類の売上が落ちたせいで収入が減り、月々のローンの返済が滞った。

2008年6月に本紙が話を聞いたとき、ちょうど彼は、当時のブッシュ大統領による景気刺激策として1,033ドル(約11.5万円)の所得税還付を受け取ったところだった。でも、そのかいなく、年末に自宅は差し押さえられ、自己破産を申告した

家を失った後、家賃1,800ドル(約20万円)の賃貸に引っ越した。「バーベキューもできない、洗車もできない、何にもできないんだ」。不動産販売の職を失った姉も一時的に転がり込んできた。

でも、徐々に状況は好転。自動車部品セールスの仕事に就いたゴンザレスは、信用情報の実績を積み上げて、昨年、ようやく念願の新居を購入できた。今度は、住宅が比較的安く、子供達の住まいにも近い、タンパ地域を選んだ。

経費を抑えるために、庭の手入れも自分でしている。「うちの芝生はこのあたりで一番青いんだ。自慢の庭だ」

しかし、54歳の彼には、ほとんど貯蓄がなく、リタイアは計画していない。妻は孫の世話ができるよう、タンパに越した時に退職したが、今後の医療費の支払いを考え、また仕事を探している。「できることから、少しずつやっていくよ」と彼は言った。

© 2018 The New York Times News Service[原文:The Great Recession Knocked Them Down. Only Some Got Up Again. /執筆:By Ben Casselman, Patricia Cohen and Doris Burke](翻訳:Ikuko.T)


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