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プレゼンの神様は、親子コミュニケーションが下手だった

The New York Times

スティーブ・ジョブズの長女、リサ・ブレナン・ジョブズの回顧録『スモール・フライ(Small Fry)』が引き起こした話題について、心理学者リンダ・ニールセンが分析。ジョブズはひどい親だったの? それとも……。

アップルの設立者スティーブ・ジョブズの長女であるリサ・ブレナン・ジョブズが、回想録『スモール・フライ(Small Fry)』を出版した。著書には父親の娘への冷酷だと思える態度が描かれているが、リサはそれは自分の精神力を養うためだったと考えていて、父を赦すと述べている。

前述の「ニューヨーク・タイムズ」記事には1500近いコメントが集まったのだが、その多くはリサが描いたスティーブ像に戸惑っているというものだった。

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2018年8月9日、ブルックリンにて、アップル設立者スティーブ・ジョブズの娘、リサ・ブレナン・ジョブズ。(Credit: Frances F. Denny/The Hew York Times)

リサが描いているのが本当のジョブズなの?

リサ・ブレナン・ジョブズの記事に対するわたしたちの反応は、わたしたち自身について何を教えてくれるのだろうか。

父と娘の関係についてわたしは何十年も研究をしてきたが、その経験や他の研究からある洞察が見えてくる。

まず、認知心理学者のエリザベス・ロフタス氏の業績が示すように、子ども時代の記憶というのは実際に起こったことを正確に表しているものではない点を覚えておきたい。忘れたことや覚えていること、そして記憶に与えている意味というのは、本人が作り上げた「人生の物語」によって色付けされているのだ。突飛で矛盾している記憶や相容れない事実をなんとか理解したり受け入れるよりも、首尾一貫したストーリーを語るほうが心地よい。そのストーリーが、事実よりもネガティブであるかポジティブであるかは関係ない。

そもそも父親像は、関わり方によっても異なるし……

このことから、父親や母親、継父や継母について、家族それぞれが持つイメージは同じでないことがわかる(ジョブズの未亡人ローレン・パウエル・ジョブズや彼女の子どもたち、スティーブの妹のモナ・シンプソンらは『(リサによる)スティーブの描写はわたしたちが覚えている夫や父親、兄のイメージとは異なります』という声明を「ニューヨーク・タイムズ」紙に出している)。

父親について研究をしているトップレベルの専門家らによると、母親と比べて、父親は遠慮がなく、子どもにかける期待や要求も大きいという。父親は、子どもの未熟な振る舞いを放っておいたり、見逃したりはしない。子どもの自立、成熟、忍耐力を奨励する。子どもの欠点について母親よりもずっと直接的に正直に話す父親も多い。そんな欠点に向き合うのに両親のどちらが協力的かと娘たちに質問すると、ほとんどが「父親」だと答えている。

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Image via Getty Images

コミュニケーションを取ろうとしているジョブズはひどくない?

子どもを愛しており子どもからも愛されている大人でも、親としてはひどい場合もある。「ひどい」親といっても、身体的や性的に暴力をふるったり、メンタルヘルス問題を抱えていたりアルコール中毒だったりして、子どもを危険な目にあわせるという意味ではない。

ひどい親というのは、娘を愛していたとしても、自分勝手で気配りに欠け、怒りっぽく、娘とコミュニケーションが取れないということなのだ。親業というのは学んで身につけるスキルなので、それを習得できない人もいる。それはひどい育児の言い訳にはならない。ただ、父親としての失敗を無視したり否定することなく、年月が経つにつれて父娘がおたがいの愛情を確認できるのだというリマインダーにすぎない。

また、研究によって、他人の行為の裏にある動機や意図をつねに理解することは不可能だということもわかっている。誰かの行為や発言に傷つけられたりけなされたりとまどったりする時、それが相手の意図だったかどうかはわからない場合もある。

インテリでもコミュニケーション下手な親だっています

一流の成功者である男性が、娘とのコミュニケーションにおいて、ぶざまで粗野で鈍感でありうるかという問いに対して、研究結果はあきらかに「イエス」と出ている。頭脳明晰で成功をおさめていながらも、エモーショナルインテリジェンス(心の知能指数)をあまり持ち合わせていない人もいる。他人の感情や社会的ヒントを読み取って対応するのが下手な場合もある。だからといって、娘に対する父親としての愛情が欠けているとか、娘のことを気にかけていないということではない。また、ナルシストで自分勝手な人間ということでもない。たんにコミュニケーションが下手ということなのだ。

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スティーブ・ジョブズとの思い出を綴ったリサ・ブレナン・ジョブズの著書『Small Fry』(CREDIT: Patricia Wall/The New York Times)

自分の親子関係はどうですか?

リサの回想録に対して個人的に感じた反応について、それは彼女の家族関係よりも自分の家族関係を反映しているのかもしれないと自問してみるといい。リサが父親との関係を受け入れるようになったことや、彼女が母や継母、異母兄弟たちをどう感じているかにもかかわらず、わたしたちのビジョンは自分の家族の鏡に映し出されたものに影響されている。

コミュニケーションに不安な親子にヒントを与える書

リサが父親を赦したことは、彼へのギフトであり、また、自分に対してのギフトでもある。スティーブが父親失格だったという苦い思いにもう悩まないと決心したことは、父親との関係で感じた喜びを否定しないと決めたことなのだから。リサは過去を否定しているわけではないが、執着しているわけでもない。赦すことは忘れることと同じではない。

リサの回想録は、自分の過失が取り返しのつかないダメージにつながるかもしれないと恐れる親たちへの、そして、父親が親業失格であることに苦悩する娘たちにとっても、癒しのメッセージになるだろう。成人した子どもは、子ども時代の両親との関係の明暗どちらにフォーカスするのか選ぶことができるのだ。リサは愛情を選んだ。わたしたちもそうしようではないか。

※リンダ・ニールセンは、ウェイク・フォレスト大学の教育心理学、思春期心理学の教授。『Between Fathers and Daughters: Enriching and Rebuilding Your Adult Relationship』『Father-Daughter Relationships: Contemporary Research and Issues』などの著作がある。

© 2018 The New York Times[Fatherhood Through the Lens of Steve Jobs/執筆:Linda Nielsen](翻訳:ぬえよしこ)


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