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田舎は「不便」で「何もない」? 見方を変えればとってもぜいたく/豊原弘恵さん

大阪で貿易代行会社を経営するかたわら、和歌山などで古民家を活用した3軒のゲストハウスを運営する女性がいる。「和歌山は磨けばいくらでも光るダイヤの原石」と話す豊原弘恵さんに、お話を伺った。

豊原さん_顔写真

豊原 弘恵 (とよはら・ひろえ)さん 有限会社イペリックス代表取締役
大学卒業後、ヴードゥー教の研究のためドミニカ共和国に渡る。帰国後、貿易代行会社を起業し、従来にない提案型ワンストップサービスを提供。諸外国との接点を持つ中で、和歌山に将来性を見出し、懐かしくも新しい本物のニッポンの魅力や価値観を提案すべく「和歌山というぜいたく」をコンセプトに「古都里ブランド」を立ち上げる。現在は旅館やホテルにはないおもてなしをモットーとするゲストハウスを運営。特に「志高庵」は和歌山大学未来学副専攻プロジェクトの中の社会実験として位置づけている。

大阪出身。イスパニア語学科専攻だった大学時代、ふとしたきっかけでカリブ海の島・ドミニカ共和国にあるヴードゥー教の村を訪れる。霊に憑依される霊媒師やささいなことでも霊媒師に相談する人々の暮らしを目の当たりにし、衝撃を受けた。「どうしてももう一度戻りたい」と、「ドミニカにおけるヴードゥー教」を卒論のテーマに据え、卒業後はドミニカにある大学院に進んだ。

水道もないドミニカの村で4年半暮らした

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村の霊媒師と(左が豊原さん)

移り住んだのは、首都のサントドミンゴから車で30分ほどの、ヴードゥー教徒が多く住む水道もない小さな村。村の人びとは、日本人を見るのも初めてなら日本がどこにあるのかも知らない。バブル崩壊直後の日本から、天と地ほどの差もある環境に飛び込んだ豊原さんは、自分の中にあった価値観が崩れ落ちていくのを感じたという。

「日本での学歴や肩書きなんて、その村じゃ何の役にも立たない。重要なのは、人に好かれて共感を得る人間性だとか、生きる上でのたくましさ。人間としての本質に向きざるをえない場所でした」

現地で知り合った男性と結婚して子どもを二人産み、1997年に帰国。ドミニカ暮らしで培ったスペイン語力を生かし、商社に勤務する。2つの商社で働いたあと、子どもと過ごす時間を増やしたいと、貿易代行会社をつくり独立した。

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水汲みに行く子どもたち

さびれていると思っていた古いものが、光って見えた

あるとき、父の郷里である和歌山県に帰省した豊原さんは、一軒の鰹節屋を目にする。創業100年はゆうに超えているような老舗の鰹節屋。目立った派手さはないけれど、地元の人々に代々愛され、細々と経営を続けている。気にしてみると、同じような店が周囲にいくつも目についた。「もしかしたら、大きく発展しないことと、存続し続けることって、相関関係にあるのかも」。今までどこかさびれていると思っていた和歌山が、にわかに光って見えた瞬間だった。

同じ頃、豊原さんは和歌山の山あいに数多く存在する古民家の魅力にも目覚める。茅葺き屋根に太い梁、日本昔話の世界に入り込んだようなたたずまい。築100年以上の古民家が軒を連ねる地域は、長いあいだ災害に見舞われなかった安全な地という証でもある。多くは住み手を失い空き家になっていたが、いつしかその魅力にとりつかれ、「熱病のように」何軒もの古民家を訪ねて回った。

やがて、外国の友人との会話にもヒントを得、古民家をゲストハウスとして再生させることを思いつく。豊富な海の幸・山の幸に、豊かな自然。そのうえ京都や奈良にも近い和歌山でなら、観光地とはひと味違った「普段着の日本の良さ」を多くの外国客に体験してもらえるのではないか——。

そうして生まれたのが、和歌山・三重に位置する3つのゲストハウス。いずれも1日1組限定で、宿泊客は自然と触れ合い、和歌山の味覚を味わい、登山やサイクリングなどのアクティビティを楽しむ。共通するコンセプトは、「宿泊客によって育ててもらう宿」だ。「デッキでヨガをしたい」「ホタルを見に行きたい」。客たちのそんなアイディアをどんどん取り入れて、「田舎でのぜいたく」を存分に感じてもらえたらと思っている。

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三重県津市のゲストハウス麓尊苑の宿泊客たち

便利・成長が本当の幸せ? ちょっと立ち止まってみて

2017年10月からは、外部講師として和歌山大学の学生たちとの地域協働にも取り組む。未来学のプロジェクトの一環として、高野山のそばのかつらぎ町志賀に「志高庵(しこうあん)」を学生たちと立ち上げた。1年も経つと、学生たちは目的意識が明確になり、地元の清掃活動や祭りなどを通してコミュニティに積極的に関わるようになっているという。「学生たちは未来の目。日本をもう一度知ってもらい、何のために働くの?ということをしっかり考えてもらいたい」

豊原さんには、活動を通して、古くて新しい価値観や経済の仕組みを提案できたら、との目論みがある。

「今はスマホがなければ生きていけません、っていう人が多いけれど、普及するまでは特に不便を感じなかったはず。ドミニカの村では毎日歩いて井戸まで水を汲みに行くのが当たり前だった。結局は慣れの問題で、本当の不幸はいつまでたっても『足るを知らないこと』『自分がほしいものを知らないこと』なのだと思います。幸せに生きていくために、『自分には』何が本当に必要なの?ってことを、もう一度見つめ直すときが来てるのではないでしょうか」

また、ドミニカには、食事中に知り合いが家の前を通ったら、声をかけて家に招き入れ、食事をごちそうする、という習慣があった。食事時を避ける日本の習慣とは真逆の「分け合う心の豊かさ」に感動した。

「和歌山にも似たようなところがあって、『たくさん採れたから、おすそ分け』と野菜や果物をもらうことが本当に多いんです。例えばスーパーで400円払って4つの柿を買ったら価値の交換は『払った金額分』だけど、柿をお隣の人にあげたら『ありがとう』の気持ちが上乗せされて、魚やお菓子に形を変えて返ってくる。『ありがとう』が積み重なって、みんなが少しずつ豊かになる。そんなわらしべ長者みたいな『他給他足』のカタチが、次の経済の仕組みの中にしっかりと根ざしていくんじゃないでしょうか

そんな暮らしは、「自給自足」よりすごいのでは、と確信している。

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志高庵のゲストたちと

創作料理のように、素材に新しい価値を

豊原さんの頭の中では、新しいアイディアがどんどん生まれてつきない。担い手がいない耕作放棄農園の柿を干し柿にして、イスラム圏で高級ドライフルーツとして売るプロジェクトや、英語が使えるタクシー運転手を養成して地方の観光を支えるプロジェクトなどなど。

私のやり方は、創作料理みたいなものです。主婦が冷蔵庫を開けて、そこにある素材だけで料理を作るように、すでにあった素材を見方を変えて新しい方法で調理してみる。素材は同じなのに、価値としては新しい。魅力的な素材が、和歌山にはたくさん詰まっているんです」

風の流れを感じとり、流れにしっかり身をまかせる。そのフットワークはどこまでも軽やかだ。彼女の足取りを見ていると、和歌山のこれからの未来が、なんだかきらきらと輝いて見えてきはしないだろうか。

11月21日、豊原さんが大阪カンファレンス「QUM BLOCS」に登壇します!

日本各地にイノベーションの連鎖をつくる!!
地方が抱える課題に対し解決の糸口をつかんだパイオニアが集うカンファレンス QUM BLOCS(クムブロックス )が、11月21日(水)、大阪で開かれます。パネルセッション「地方の魅力発掘」には、豊原弘恵さんも登壇。和歌山の魅力とその可能性を語ります。情熱あふれるお話を、ぜひ聴きに来てください!

日時:11月21日(水)
場所:関西大学 梅田キャンパス KANDAI Me RISE
詳細・申込み:https://www.qumblocs.com/
主催: Filament, inc.

取材・文/中村茉莉花(Cafeglobe編集部)、写真/豊原さん提供


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