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「キラキラ」だけじゃ進まない! 本音で話そう、ダイバーシティの理想と現実

MASHING UP/マッシングアップ

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多くの企業が急務として掲げるダイバーシティ推進。男女比率が大きく異なるオムロンとワコールでは、どんな取り組みが行われているのでしょうか?

決して“キラキラ”した側面ばかりではないダイバーシティの現実について、MASHING UP(2018年11月29日・30日開催)にて、本音のディスカッションが行われました。

登壇したのは、ワコールホールディングス ダイバーシティ・グループ人事支援室の鳥屋尾優子さん、オムロン ダイバーシティ推進課の上村千絵さん、モデレーターは、NPO法人8bitNews 代表理事、GARDEN代表の堀 潤さんです。

女性9割でも管理職は男性が多い

「今回のテーマは“キラキラダイバーシティはいらない”。きれいごとではなく、お二人の本音をお聞きしたいんです」という、モデレーター堀 潤さんの言葉から始まったディスカッション。登壇者の鳥屋尾優子さんが勤めるワコールホールディングスは社員全体に占める女性の割合が90%、上村千絵さんが勤めるオムロンは20%と、2社の社内環境は真逆にあります。

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モデレーターを務めたジャーナリストの堀さん。

ブラジャーを70年以上作り続けてきたワコールでは、多くの女性が活躍してきました。

「ワコールは商品の企画開発から材料調達、生産、販売まで一貫したバリューチェーンを築いており、社員の9割が女性ですが、それは、社員の多くを占めるビューティアドバイザーが女性だという理由から。内勤のスタッフは男性が6割以上で、管理職も女性に比べ男性が多い」と鳥屋尾さん。

ダイバーシティ推進の専門部門を設置した2014年から、まずは 女性管理職率を高めることをKPIの一つとして活動してきました。当時の女性管理職比率は15.4%。目標は2019年3月に20%でしたが、今年4月に20%を超え、順調に推移していると話します。

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ワコールホールディングスの鳥屋尾さん。

女性は「自己肯定感」が低くなりがち

女性管理職を増やすために、ワコールではどんな工夫がなされたのでしょうか。最初に直面した問題は、 自身のこれからのキャリアにおいて管理職になる自分を思い描けている女性がさほど多くないという事実 でした。

「『 女性管理職が会社に増えることはいいこと、ただ、 私はちょっと』という反応が多かったのです。やったことがないから想像できない。想像できないことって、人は積極的に『やろう』とは思えませんよね」(鳥屋尾さん)

そこで、管理職とはどんなものか情報提供をしたり、 本人たちが管理職を目指すにあたり弱みだと感じているスキル (問題解決力や巻き込み力)の研修を行うことに。そして同時に、彼女たちが二の足を踏む理由を紐解いていったところ、浮かび上がってきたのが自己肯定感の低さでした。

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「ある分野のスペシャリストとしての将来像は描けても、多くの部署を調整して大きな課題を解決していく自分の姿は想像できない、そう思い込んでいます。でもそれは誤解で、能力もあり周りからの評価も高いのに自己肯定感だけが低い、というのはよくあるケースです。

例えば、ワコールでは部下、上司、自分からの多面評価を管理職対象に行っていますが、女性は部下からも上司からも評価が高いのに、男性にくらべて自己評価が低いという傾向が出ています。女性は自分に対する理想が高く、そこに到達できないことに不安を感じやすいのかもしれません。

とはいえ自己肯定感は、他人から評価されるだけで変化するものではありません。ひとつひとつの仕事を積み重ね、成功体験を増やしていく、その実感の繰り返しでしか高めることができません。小さなゴールを細かく設定し、そのゴールをクリアしていくことで“達成感”と“自己肯定感”を得て、また次のゴールへ向かう。そういったサイクルで新たな挑戦をしてほしいと伝えてきました 。

そしてもうひとつ思うのは、はたして全員が管理職を目指すべきなのかということ。 本来のダイバーシティとは自身の強みを発揮できる多様な働き方、多様なキャリアが選べてこそ実現できます。管理職というキャリアだけでなく、社員が自ら選んだキャリアに挑戦できる仕組みもさらに考えていかなければ、と感じています」(鳥屋尾さん)

製造現場で女性マネージャーを見たことがなかった

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オムロンの上村さん。

いっぽうオムロンは、 電子機器製造業でBtoBビジネスが中心。 2012年にダイバーシティ推進グループを設立。まだ世の中にダイバーシティという言葉自体 の理解が浸透していない状況で、女性管理職を増やす試みが始まりました。

「オムロンは男性社員比率が80%。本音の話、『うちは女性向けの商品を作っているわけでもないし、外資系でもないのに、なぜ声高に“女性活躍”というのだろう』というトーンは確かにありました」(上村さん)

2012年の時点では、女性管理職数は22名と全体の2% にも届いていませんでした。「製造現場で“動く女性のマネージャー”を見たことがない」と、幻の存在のようにいわれる状況から少しずつ女性マネージャーを増やし、 今は59名を数えるようになりました。

つらさを吐き出す場所が必要

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「女性マネージャーが増えるということは、それまで男性が築いてきた牙城に切り込むということ。男性からの反発はなかったんですか?」と、堀さん。男性の立場から考えると、既得権を侵されると感じてしまう人もいたはずです。

「登用はフェアに。登用基準は変えていません。しかし、その登用試験を受験するチャンスは、従来の枠からさらに、女性や若手にチャンスが届くように広げました。

また、女性には、今まで男性がつくってきたマネジメントスタイルだけではなく、自分たちなりのスタイルでマネジメントに参画できるということを丁寧に話し、一緒に管理職を目指す仲間を作りました。 自分たちなりのスタイルの確立は、ただ研修をするだけではなかなか見つからない。頑張れと後押しするだけでなく、なかなか見つけられない自分たちなりのスタイルを確立するための不安やつらさを共有する場が必要。毒を吐いてもらうには対面の、本音のコミュニケーションが重要です(笑)」(上村さん)

まずは管理職という新たな世界を目指す女性一人ひとりと向き合い、「ここなら思いを話せる」「同じように悩んでいる人がいる」と安心してもらう。その上で、 さまざまなスタイルを持つメンバーのそれぞれの事情(例えば、時短勤務や育児に関わること)への支援など、会社の施策で後押しできることを着実に実行することで、「自分なりのスタイルでやってみよう」と思ってもらえるようになったといいます。

現在は上村さん自身も含め、子育てをしながらマネージャーをする女性も増えたそう。

「“管理職として、新たな視線で、新たな道を切り拓いてほしい”という会社からのメッセージが伝わり、少しずつ女性のなかに、自覚のような、やれるかもという自信のような、そして、恐れずやってみようという気持ちが芽生えてきた気がします」(上村さん)

成果や活躍はひとつだけの価値観ではない

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最後に話題に上ったのは、ダイバーシティの問題点です。

「たとえば育休者のようにダイバーシティの対象になった人はいいけれど、そうではない人からすると、ダイバーシティは遠い出来事になってしまうのではないでしょうか。属性に囚われないダイバーシティが必要だと感じます」(鳥屋尾さん)

「 『ダイバーシティ=女性活躍』ではありません。すべての多様な人々が『自分の持てる能力を思う存分発揮できるために何が必要か』を考え、変革を起こしていく取り組みです。しかし、自分が個性を発揮して、会社に、そして社会に貢献するとはどういうことかをきちんと理解できていないとなかなか安心して思いきりのよい提案や発言はできないものです。

一方で、能力の発揮のために何が必要かがわかれば、それは、その人だけでなく、ほかのメンバーにとっても必要なことである場合が多いです。自分だけでなく、多くのメンバーが、自分たちの能力を思う存分発揮して、会社に社会に貢献できる活動につながる。みんながそういう意識を持ち、対話して変革していくことができれば、日本も少しずつ変わっていくのでは」(上村さん)

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「今日はお話をうかがって、ダイバーシティ推進のためには、仕事の評価がフェアで誰が見てもわかりやすいこと、そして社員の可能性を広げる選択肢を会社側がいろいろな形で作っていくことが大切だと感じました。

そして、仕事の成果や活躍はひとつの価値観では語れないので、色々な形の価値観を会社側が提示していく必要があります。

それによって、“私の問題は、誰かの問題の解決にもなる”という成功体験が積み重ねられていくことになる。試行錯誤のこの先は、今日ここにいる皆さんで一緒にやっていきましょう!」(堀さん)

上村さん、鳥屋尾さんの本音トークと堀さんの呼びかけに、会場も大きな拍手で応えた充実のディスカッション。企業にとって、自分にとってのダイバーシティとは何か、改めて考えるきっかけをくれました。

鳥屋尾優子さん(ワコールホールディングス ダイバーシティ・グループ人事支援室 副室長)
ワコール入社後、経理・財務部門に配属。その後、広報部門にてワコールの社外向けPR誌の編集、社内報の編集に携わり、多数の文化人、学者、医療従事者などへのインタビューを実施。ワコールの経営者や社員、世界で働くワコールの仲間への取材を通じてワコールに根付く経営理念を体感する。その後、宣伝部門でPR・企業広告制作業務に従事。PR部門、情報開発を行う宣伝企画部門の課長を経て、ワコールが2016年10月に京都駅前にオープンした美をテーマにした学び場「ワコールスタディホール京都」を立ち上げ、館長を経て現職。

上村千絵さん(オムロン グローバル人財総務本部 グローバル人財開発部 ダイバーシティ推進課 課長)
オムロンに入社後、購買部、経理部、経営戦略部を歴任。2012年、同社で新設されたダイバーシティ推進部門グループの立上げメンバとして参画。女性、障がい者、キャリア入社、高齢者、外国等の多様な人財が活躍できる取り組みをスタートした。2017年現部門課長職就任、オムロン初の育児短時間勤務での管理職となる。2女(15歳と8歳)のワーキングマザー。 現在は、介護・LGBTなどもテーマに加え、誰もが力を発揮できる職場の実現を目指し、オムロンのダイバーシティ推進を牽引する。

堀 潤さん(8bitNews 代表理事/GARDEN 代表)
ジャーナリスト・キャスター。1977年生まれ。元NHKアナウンサー、2001年にNHKに入局し、「ニュースウォッチ9」リポーター、「Bizスポ」キャスターなどを務める。2012年米国ロサンゼルスのUCLAで客員研究員として、日米の原発メルトダウン事故を追ったドキュメンタリー映画「変身 Metamorphosis」を制作。2013年、NHKを退局しNPO法人8bitNews代表に。2016年、GARDENを設立。現在出演しているメディアは、TOKYO MX「モーニングCROSS」キャスター、J-WAVE「JAM THE WORLD」ニュース・スーパーバイザー、abemaTV「AbemaPrime」コメンテーター、毎日新聞、ananなど。淑徳大学客員教授。

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MASHING UP

さよならキラキラダイバーシティ-理想と現実の狭間でもがく企業の挑戦
11月30日(金)@TRUNK(HOTEL)

オムロン

撮影/間部百合

田邉愛理

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