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2045年、食料危機は来ない。/菊池紳さん[後編]

LIFE after 2045/シンギュラリティと私の未来

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2045年にシンギュラリティを迎えたら、私たちの暮らしや仕事、価値観はどう変わる?

来るべき日に向けて今できることを明確にして、明るい未来を切り拓くための連続インタビュー[LIFE after 2045]。前編中編に続いて菊池紳さんに、先入観や固定観念にとらわれないコツをお聞きしました。

食料危機が「来ない」未来をつくる

——菊池紳さんにとって、2045年とは、どんな意味を持つと思われますか?

菊池紳(以下、菊池):前回の話の繰り返しにもなりますが、私は「2045年の世界は、あらゆるものを自分で作る社会にしたい」と思っています。と同時に、「食の未来」を語る際に、食料危機の話題もよく出てきますが、私は、「食料危機が来ない2045年」は十分実現可能だと思っています。

——もう少し詳しく、お聞かせいただけますか?

菊池:実は食べ物の総生産量って、今も足りていると言われています。現状、全世界で生産可能な穀物総量を総人口で割ると、ひとり当たり300kg以上になる。でも、人間ひとりが1年間に必要な穀物の量は180kgくらいで済みます。量的には足りているのだけれど、分配の不均衡が問題なのです

現状だと、大量生産した食料を都市に向けてまとめてドンと輸送する。その方がコスト的にも効率もいいから。だけど送り先で余ってしまうと廃棄されて、フードロスのような問題も発生する。必要量をしっかり予測し、配り切る仕組みさえあれば、それが回避できるだろう……ということで、私たちもSENDを通じて取り組みを進めています。

食料は足りている。しかし分配の不均衡が問題。

しかし、そもそも「(食料を)運ばなくても済む」のであれば、それが一番良い。AIやロボティクスの進展で、都会でこなす仕事の大半はなくなる。地方に行っても、生活が不便でない時代が来る。その時に、皆が各地に分散的に住み、それぞれが食べ物を作って暮らす。そういう社会のデザインをしたいと思っています。

前回にお話ししたような、食べ物を作る人が増えてくれば、食べ物の物々交換がより進展するかもしれない。違う種類の食べ物の交換レートとかを、AIが公平かつ自動的に算出してくれるようになるかもしれません。そうなれば、もしかすると通貨自体が必要が無くなってしまうかもしれない。

——たとえば、メルカリのような各家庭の不要品をポイント交換する仕組みがありますが、さらにそれが進展して、たいていの食べ物をキャッシュレスで交換し合う……みたいなビジョンでしょうか?

菊池:物々交換を担保する仕組みや、取引を信頼性の高いものとして設計することは今だって可能です。それは(AIやロボティクスというよりは、むしろ)ウェブサービスやブロックチェーン技術などの進化とともに実現しています。そして、これまで社会の基盤として当然のように必要とされていた(貨幣のような)概念やインフラもまた、変化していくと思います。

AIやロボティクスの社会実装が進んだ未来において、人間は何をするのか? 私たちの提案は、「食べ物を作ろうよ」、「みんなで食べ物に関わろうよ」というものです。わたしたちの会社プラネット・テーブルのビジョンは「すべての人が食べ物に参加する社会」です。栽培や養殖から、加工や輸送や調理まで……食をめぐる何らかのプロセスに、万人が関わるような社会ができれば面白い。それぞれが作る楽しさを味わい、足るを知りながら、届ける喜びにあふれる社会になれば良い。そんなことを夢見ながら、仕事をしています。

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プラネット・テーブルWebサイトより(https://planet-table.com/)

過去をアップデートしながら、未来を見る

——最後に、未来を考える上でおすすめの本をご紹介いただけますか?

菊池:最近読んだ本では、スティーブン・レの『食と健康の一億年史』(亜紀書房、2017年)。自然人類学者の著者が、世界各地をフィールドワークしながら、人類が口にしてきたモノの一億年分の歴史を辿った本です。

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私は歴史を再発見するプロセスが好きなんです。「これはこうだ」と信じられていた定説が、「実はそうじゃなかった」という新説が、エビデンスと共に記されている研究や本を好んで読みます。

たとえば私たちが子供の頃、ティラノサウルスは図鑑などで狩猟型(ハンター)だと解説されていましたが、最近では、屍肉を漁っていた清掃型(スカベンジャー)だったという説が有力だそうです。初めてその新説を知った時は、ちょっとショックでした(笑)。もしかしたら、今はもっと違う研究結果が出ているかも知れません。

あらゆることに通じますが、一般的に信じられていることは、実は真実じゃない。「真実」や「常識」だと信じられている多くのことが、まだまだ解明されていないのかも知れません。研究や分析は常に進展していて、常に新発見が繰り返されている。

ものを考えるときには、先入観を取り払うべし

たとえば近年では、「肉食は健康によくない」、「人間は元来、肉をあまり食べなかったはずだ」というような意見を多く見かけようになりました。だけど、今から250万~1万年前、農耕以前の狩猟採集民が食べていたのは、野生の動植物だったわけです。我々の祖先にとっても、たんぱく質や脂肪はなじみ深いもので、むしろ今ほど炭水化物ばかりを大量には摂っていなかったそうです。

もちろん、たんぱく質や脂肪の過剰摂取が心臓病やガンの発症率を高めるという研究結果もあります。一方で、肉食が体格を立派に成長させ、性的成熟を早め、繁殖を促すことがこの本の中には記されています。人にとって、適度な脂質の摂取が、人類の生殖や繁殖に重要だったのではないかと。ひいては「少子化の要因のひとつは、ヒトが脂を摂らなくなったからでは?」といった指摘まである。そういう研究を、先端的なセンシング技術やAIが加速させてくれることを期待しています。

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もともと私は中高大と運動部でした。だから、脂を摂取した時にパワーがつく実感はあったわけです。だから「脂を摂らない生活が良い」とか「脂は健康に悪い」という極論は、正直なところ、共感しづらかった。「体の調子がよくない時には、脂質をしっかり摂りましょう」とか、そういう民間療法や食生活の知恵って、世界中にあるじゃないですか。

この本では、著者が世界中を旅しながら各地の食文化を紐解きつつ、出会う多くの研究者の先端研究を引用しながら、脂質の重要性を解説しています。直感や仮説を大切にしながらも、「先入観にとらわれず、世界中を調べて歩く」という著者の姿勢に、とても刺激を受けます。

過去を知り続けることは、これからの物事の見方をアップデートしてくれます。その積み重ねが、より良い未来をつくることに繋がるんだと思います。私は、AIがこの過去の探求もサポートしてくれて、より良い未来づくりに貢献してくれると信じています。 [了]

菊池紳(きくち しん)さん/起業家、ビジネス・デザイナー
1979年生。大学卒業後、金融機関や投資ファンド等を経て、2013年に官民ファンドの創立に参画し、農畜水産業や食分野の支援に従事。2014年にプラネット・テーブルを設立。“食べる未来”をテーマに、デザイン/テクノロジー/サイエンスを活用し、未来への提案となる事業を生み出している。

聞き手/木村重樹 撮影/中山実華 構成/カフェグローブ編集部

私たちの意思で食の未来はポジティブになる/菊池紳さん[前編]

近い将来にシンギュラリティを迎えたら、私たちの食の未来はどう変わる? 食の流通とAIの関係をプラネット・テーブル菊池紳さんに聞きました。

https://www.cafeglobe.com/2018/12/singularity2_1.html

AIやロボティクスは、食べ物と相性がいい/菊池紳さん[中編]

プラネット・テーブル菊池紳さんが考える「未来の食のあり方」は?FOOD5.0の概念も教えてもらいました。

https://www.cafeglobe.com/2018/12/singularity2_2.html

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