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ダイバージェンスの先に広がる新しい働き方/林千晶さん[前編]

LIFE after 2045/シンギュラリティと私の未来

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2045年。仕事、コミュニケーション、教育、アイデンティティ、命のあり方……シンギュラリティを迎えることで変わるもの、変わらないものはなんでしょう?

各界の有識者と検証し、次世代の未来に遺すべき価値観を探る連続インタビュー第3回目は、ビジネスやコミュニティなどの総合的なデザインを手がけているロフトワークの林千晶さんをお招きして、シンギュラリティ時代の「働き方」や「生き方」についてお話を伺いました(全3回掲載)。

林千晶(はやし ちあき)さん/株式会社ロフトワーク代表取締役
早稲田大学商学部、ボストン大学大学院卒。花王株式会社を経て、2000年にロフトワークを起業。Webやビジネス、コミュニティなどのデザインを総合的に手がける。デジタルものづくりカフェ「FabCafe」や、森林再生を目指す「株式会社飛騨の森でクマは踊る」なども運営。

シンギュラリティの到来を可能にしたのは、インターネット

——この連載では、シンギュラリティという用語を(人間の知性を超えた)汎用人工知能の誕生に限定せず、現代社会の各所ですでに引き起こされている「機械と人間の立場の逆転」を契機に、この先の社会的ビジョンや新たな価値観を探ってゆこうと考えています。

そこで林千晶さんには、AIやロボティクスが社会の隅々に浸透しつつある現在とその先の未来において、人々の「働き方」はどう変容してゆくのか? そのあたりの率直な展望をお聞きしたいと思います。

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林千晶(以下、林):まず前提として、シンギュラリティという社会構造や価値観の大変革の根っこには、インターネットという技術基盤があります。それがますます高速かつ大容量通信となり、大半の人間やモノが常につながっている状態になっていく。

生身の人間が処理できる容量をはるかに超えたデータをもとに、様々な情報をリアルタイムに分析してフィードバックし、個人や社会、ビジネスからの反応を引き起こせるのは、常時接続が可能な世の中であることが必要条件です。つまりシンギュラリティは、ネットが引き起こしてきた変化の「最先端」だと解釈できます。

私の尊敬するメンターである伊藤穰一(MITメディアラボ所長)が、面白いことを教えてくれました。キリストの生誕を期に、西暦が「BC(紀元前)/AD(紀元後)」に分けられたように、インターネットの誕生は「ビフォア・インターネット(BI)/アフター・インターネット(AI)」と区別していいほどのインパクトを、ビジネスや社会、果ては人間の思考にまで与えることになるだろうと。

つまり、EC(電子商取引)やブログ・カルチャーだけがインターネットじゃない。いつでも、なんでも、どこでも、即座につながっていく。さらに人やモノの動きや状態もセンシングされて、より適切なフィードバックがかかる。そういうインターネットの進化の中に人工知能もどんどん実装され……という文脈で、シンギュラリティを捉えています。

インターネット誕生「前」と、インターネット誕生「後」

また、一部の領域においては、すでに人間よりもデータや機械の方がずっと優れているわけで、そういう意味では、「人間が人工知能に追い越される」みたいな話は何を今さら、という気もしますよね。正確性や記憶性において、人間は自分たちよりも正確な機械に依存しながらそれを活用することで、自分たちの判断を賢くスピーディーにし、より儲かるようにもしてきた。

なので、私の中のシンギュラリティとは、SF映画で「彗星が地球にぶつかります!」みたいな、ある日突然襲いかかってくるものではなくて、すでに引き起こされている状況が、今後ますます強烈になるという話なんです。逆に今まで「これはできない」と諦めていたことが、今後はAIやロボットにどんどん助けてもらえる……といった、希望的観測も持っています。

統一化、それとも多様化?

シンギュラリティについて議論する際、意見やビジョンが大きく異なってくるポイントは“2つ”あって、そのどちら側で物事を見ているかに拠るところがあります。

その“2つ”とは……雑誌『WIRED(ワイアード)』の創刊編集長ケヴィン・ケリーが提唱していた「コンバージェンス(Convergence)」と「ダイバージェンス(Divergence)」という言葉で説明できます。

コンバージェンスはグローバル化によって統一化が進んでいく現象。逆に、ダイバージェンスは多様化が進んでいく現象。これらが同時に発生し、さらに加速しているのが現代社会です。

「コンバージェンス」と「ダイバージェンス」

前者の「コンバージェンス」に焦点をあてると、国家間の競争がいっそう激化して、中国やアメリカのような大国と戦わざるをえず、さらには国の枠組みを超えたグローバル企業も誕生し、国家がそれをどう規制すれば良いのかが問われてくる。市場の競争原理に従えば、グローバリゼーションには歯止めがかからず、「より効率よく」という力学に抗えない

かたや、後者の「ダイバージェンス」にフォーカスすれば、今日的なプラットフォームを実現した技術のおかげで、たとえば農林水産業においても、より多様かつ少量でもやっていける余地が生まれた

地産地消とか伝統工芸とか、地域に限定される営みがグローバルにマッチすることも可能になった。従来ならば大企業、あるいは個人の趣味としての営みでしか成り立たなかったことが、インターネットのおかげで立派な事業になるわけです、今や。

この両方が同時に起きているのが現代社会です。なので、どちらの側面を強調するかで真逆に聞こえるストーリーを組むことができます。では私はどちら側にモチベーションがあるかというと……ずばり後者です。

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——「先端技術やシンギュラリティによって、ますます多様になる未来」のほうですね。

林:さらにそれを加速させるためには何が必要かまで、考えたい。新しい技術が導入される時に、個人や社会がそれをどう利用するのが最適か、試行錯誤をしながら未来を形づくっていくものだと思うので。

機械を設計するのも利用するのも人間なので、「人間が嫌なこと、苦手なことを人工知能に代替してもらう」ことが進展するでしょう。18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業革命のように、そこで何か行き過ぎが発生したら、その揺り戻しとしての自浄作用が起こる。それが新技術導入の前提だと思います。

AIはどのように導入されていく?

林:ただし、本来は多様性と複雑性を評価するために導入されたはずの人工知能が、結果として同質化を推進してしまう現象が、まだ運用レベルが未熟である段階で引き起こされる可能性はあるでしょう。すると、そういう“マイナスの事例”が注目され、一部の報道メディアが「ほらやっぱり!」と非難する。

それに対して、「いやいや、こんな良い使い方もありますよ」と新しいポジティブな使い方を考案してゆく……それが、今後引き起こされるであろう、AIの導入をめぐるストーリーのような気がしています。私自身、そういうストーリーを以前経験したことがあります。

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——具体的に、それはどういう経験ですか?

林:2010年代初頭、3Dプリンターの技術が実用化され、話題を呼んだときに、メディアは「3Dプリンターで、人間は、銃を作ることができる」と言って、それを危険視する記事がたくさん出ました。そんな状況下で私たちロフトワークは、レーザーカッターや3Dプリンターを設置した「デジタルものづくりカフェ FabCafe Tokyo」を、ここ渋谷に設立したのです。そうしたら案の定、「何を作るんですか? 銃が作られたらどうしますか?」といった反応がいっぱいありました。

「“何が作れる”かが分からないから、まず3Dプリンターをみんなに触ってもらい、デジタルファブリケーションの可能性を探求する場所をつくります」と言って、FabCafeをオープンしました。結果、「自分のアイデアを形にする場所」として機能し、ここでの経験や発見を契機に起業する人も出てきました。

「自分が欲しかったモノ(立体物)」が実際に作れて、他人からもそれが評価されると、製作意欲やその規模がより拡大し、事業としても独立していける……こうした流れが実現したわけです。

個人や小集団で、つまり大企業に入らなくても、自分のやりたいことを事業化して、それを生活基盤にしていける道筋がつく。3Dプリンターのような先端技術が身近になることで、そういう新しい働き方を実現する人がどんどん誕生してきた。

なので、こうした場所を作る意味があるし、「できますよ!」というメッセージも発信してゆくべきでしょう。シンギュラリティに関しても、その本質は(FabCafeの件と)基本的には同類だと思っています。<中編に続く>

きっかけを運んでくれるAIだったらウェルカム!/林千晶さん[中編]

シンギュラリティをひかえて、AIの進化と台頭によって“なくなる仕事”とそれ以上の脅威について、林千晶さんにインタビュー。

https://www.cafeglobe.com/2019/01/singularity3_2.html

2045年は「知縁」 で結ばれてゆく /林千晶さん[後編]

明るい未来を切り拓くためには? より理想的で開かれた未来の「働き方」と「生き方」を林千晶さんに伺いました。

https://www.cafeglobe.com/2019/01/singularity3_3.html

聞き手/木村重樹、撮影/中山実華、構成/カフェグローブ編集部

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