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半世紀も前に、コンピュータに言葉を教えた女性がいた

The New York Times

1851年以来、ニューヨーク・タイムズ紙の死亡記事は白人男性で占められてきました。この「Overlooked(見過ごされた人たち)」シリーズでは、これまで偉業を成し遂げながらも取り上げられなかった故人の経歴を紹介していきます。

かつてはとんでもないアイディアだった

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他の科学者たちがコードを使ってコンピュータとやりとりしようとしていた時代、カレン・スパーク・ジョーンズさんは、コンピュータに人間の言葉を教え、理解させました。

そして、彼女のテクノロジーは、グーグルのような検索エンジンの基礎を築いたのです。スパーク・ジョーンズさんは自然言語処理に注力した独学のプログラマーで、コンピュータ分野の女性たちを擁護してきました。社会の変化に順応できないコンピュータ科学者たちが率いるテクノロジーに警鐘を鳴らし、シリコンバレーの現状を何十年も前に示唆していました。

「彼女が取り組んでいたことの多くは、5年から10年前まではとんでもなくて理解されなかったけれど、今では誰もが当たり前だと思っています」と語るのは、ジョン・テイト氏。スパーク・ジョーンズさんの長年の友人で、英国コンピュータ協会の仕事をしています。

検索エンジンの基礎理論は、1972年にできていた

スパーク・ジョーンズさんが1972年に「Journal of Documentation」誌に発表した重要な論文が、現在の検索エンジンの基礎を築きました。その論文のなかで、コンピュータが単語と単語の関係を翻訳するための原理を公式化するために、彼女は言語学と統計学を組み合わせましたが、当時それは型破りのアプローチだったのです。

スパーク・ジョーンズさんは、「2007年までにはほとんどのウェブエンジンはこの原理を使いますね」と述べています。

英国コンピュータ協会のインタビューではこう言っています。「統計的情報を使って検索語の重みづけをするものはどれも、わたしが1972年に発表した重み付け機能を使うことになるでしょう」

旧姓を使い続けたのも画期的だった

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2002年、カレン・スパーク・ジョーンズ。コードではなく言葉を使ってデータを検索できるシステムを作り、検索エンジンの基礎を築いた。ケンブリッジ大学提供。(Computer Laboratory/University of Cambridge via The New York Times)

カレン・アイダ・ボース・スパーク・ジョーンズさんは1935年8月26日、イギリスの織物工業の街ハダースフィールドに生まれました。父は、化学講師のアルフレッド・オーウェン・ジョーンズさん。母は、第二次世界大戦中にロンドンに亡命中、ノルウェー政府の仕事をしていたアイダ・スパークさんです。

ケンブリッジ大学で歴史、続いて哲学(当時はモラルサイエンス学部という名称)を学んでいた時、ケンブリッジ・ランゲッジ・リサーチ・ユニットの所長、マーガレット・マスターマンさんに出会います。彼女に刺激され、スパーク・ジョーンズさんは言語学を学ぶことに。スパーク・ジョーンズさんはのちにマスターマンさんのことを、「とても変わっていて面白い女性」と評しています。マスターマンさんは職場で旧姓を使っていましたが、当時は珍しいことでした

スパーク・ジョーンズさんも、1958年同僚のコンピュータ科学者のロジャー・ニーダム氏と結婚しても、「自分自身の変わらない存在を保つことができる」と言って、旧姓を使い続けました。

単語のどの意味が使われているのか、人はどう判断する?

マスターマンさんのもとで働き始めたスパーク・ジョーンズさんは、コンピュータに複数の意味を持つ言葉(たとえば「field」)を理解させるのにはどうプログラムすればいいかを考え、巨大な類語辞典をプログラムすることにしました。

「自然言語ではどの単語も意味が曖昧です。複数の意味がありますから。ある言葉が使われているとき、それがどの意味で使われているのかを人はどう判断するのでしょうか」と、あるインタビューの中で語っています。

重要な論文を次々と発表

1964年、スパーク・ジョーンズさんは論文「Synonymy and Semantic Classification(同義性と意味論の分類)」を発表しました。これは、いまでは自然言語処理の分野で基礎的な論文とみなされています。

1972年にはinverse document frequency(逆文書頻度)という概念を導入します。これは、その重要性を決定するために、ひとつの書類の中である単語が使われた回数を数えるものです。こちらも、現在の検索エンジンの基礎となっています。

1980年代には、初期の音声認識システムにも取り組み始めました。

赤いセーターと白ブラウスの定番スタイル

スパーク・ジョーンズさんは、深く響くような声といたずらっ子のようなユーモアセンスの持ち主でした。仕事では、ブルージーンズ、赤いセーター、白いブラウスというお決まりのシンプルな格好をしていました。馬の蹄鉄の一部と石を使って自分で作ったブローチも愛用。ケンブリッジでは晩餐会がよく行なわれましたが、自転車で行くときには、洗濯バサミでドレスを自転車のハンドルに留めていくことで知られていました。

1982年、イギリス政府の要請でコンピュータサイエンスのリサーチを国じゅうに拡大するためのイニシアチブ、Alvey Programに関わることになります。1993年、ジュリア・ガリアーズ氏とともに「Evaluating Natural Language Processing Systems(自然言語処理の評価)」という教科書を執筆。この本は自然言語処理の分野で大きな影響力を持つことになりました

1994年には、自然言語処理分野のプロフェッショナルの国際的な団体であるAssociation for Computational Linguistics(計算言語学会)の会長に就任しました。

ようやくケンブリッジ大の常勤教授に

1999年には、ケンブリッジ大学の常勤教授になります。そこにたどり着くまでに長年かかったことが彼女には不満でした。それまでずっと長い間、終身雇用ではなく学内でも低い立場の雇用を「ソフトマネー生活(経済的に不安定な生活)」と呼んでいました。

昇進が遅かったことについて、「ケンブリッジは、多くの面でユーザーフレンドリーとは言えませんでしたね、特に女性のユーザーに対しては」とスパーク・ジョーンズさんは語っていました。

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2000年代に入り、彼女はコンピュータ科学の分野で多くの賞を受賞しました。

そして、2007年4月4日、スパーク・ジョーンズさんはがんのため、71歳で亡くなりました。そのときニューヨーク・タイムズ紙には死亡記事は掲載されませんでした。2003年、彼女の夫が亡くなったときには死亡記事が出たのですが。

男に任せておくには重要すぎる

いまでも彼女の公式は研究者たちに引用されています。彼女のアイディアは、AI研究として実現しつつあり、どんどん広がりを見せています。

「(軌跡を見ると)彼女がいかに先進的だったか、彼女の仕事がいかに重要だったか、そして最初の20年間は彼女の仕事がほとんど認められなかったかがわかります」と語るのは、コロラド大学コンピュータサイエンス学部と言語学部のマーサ・パーマ教授。

スパーク・ジョーンズさんは、性別に関わらず若い世代の研究者のメンターを務めました。そしてこんなスローガンを思いついたといいます。

「コンピューティングは男に任せておくには重要すぎる」

©2019 New York Times News Service[原文:Overlooked No More: Karen Sparck Jones, Who Established the Basis for Search Engines/執筆:Nellie Bowles](翻訳:ぬえよしこ)

Image via Shutterstock

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